認知症疾患医療センターセンター長挨拶
私たちの日々の生活は、周囲の状況を認識したり、物事を記憶したり、思い出したり、道具を使用したり、思いを言葉にしたり、
自分の意志で動いたりといった様々な能力に支えられています。
もし、そのような能力が損なわれると、日常生活に様々な支障が生じてくるのです。誰もが年齢とともに物忘れを自覚しますが、
そういった年相応の変化では説明できません。認知症には、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、
前頭側頭型認知症、パーキンソン病に伴う認知症など、様々なタイプがあり、それぞれに症状の現れ方や経過、治療法にも違いがあります。
ですから、適切に診断と評価を行い、その方にあった治療法を考えていくことが大切なのです。
認知症の評価には、日常生活の様子をお聞きするだけではなく、心理検査、脳構造画像(MRIやCT)、
必要に応じて脳機能画像(PET、SPECT)が必要なこともあります。
また、他の精神や身体の病気のために認知症によく似た症状を示すことがありますから、他の病気の可能性を除外することも大切です。
また、怒りっぽさ、気持ちの落ち込み、不安、幻覚や妄想などを伴うこともあり、ご本人だけではなく、介護を提供しているご家族の方々の
ご負担となっていることもあります。これらを治療したり、適切な対処を考えていくことが必要です。
これらの治療や支援を組み立てるには、専門医による診察に加え、高度な医療機器を用いた評価、様々な職種による総合的な評価を行う必要があります。
私どもの認知症疾患医療センターは、最先端の知識と技術をもって、患者の皆様を適切に診断、評価し、その情報をもとに医師、看護師、臨床心理士/公認心理士、
精神保健福祉士(MHSW/PSW)などの多職種で相談し、その人に最適な治療を提供することを役目としています。
日本の老齢人口割合は急激に増加し、勤労人口比率が下がり続けていることが指摘されています。つまり、人口構造の変化に伴い、
高齢期の認知症の患者さんは増え続けていますが、その方々を支える世代は少なくなっているということです。
さらに認知症は高齢期の方々にのみ見られるものではありません。
まさに働き盛りで、子育ての過程にある若年期にもみられ、患者さんご自身だけではなく、ご家族にとっても重大な事態になるのです。
患者さんや家族の生活を、地域の医療や福祉・介護サービスのもとでどのように支えていくことができるのかは極めて重要なことなのです。
私たちの認知症疾患医療センターは、県下の医療機関の中核となるとともに、研修会などを通じて地域の医療機関や福祉機関との連携を構築し、
患者の皆さんを地域でのサポートへと繋げる役割も担っております。
ご自身あるいはご家族が認知症かもしれない、という気づきに至ったとき、その現実と直面することは辛いものです。
幸いにも認知症の医療は急速に進歩してきましたが、まだ魔法のように完治する(Cure)というところまでは到達できていません。
しかし、その認知症の症状を改善したり、症状の進行を抑制する方法はあります。また、これだけは確実にいえることは、
ケア(Care)できない認知症はないということです。私たちは、県下の認知症の患者さんとそのご家族のために、
今日の最高レベルの診断、評価、治療とケアを提供したいと考えています。ぜひとも当センターをご活用ください。
奈良県立医科大学認知症疾患医療センター
センター長 岡田 俊
基幹型認知症疾患医療センターについて
- □ 専門医療相談対応
- □ 鑑別診断とそれにもとづく初期対応
- □ 行動・心理症状や身体合併症に対する急性期対応
- □ 研修会・連絡協議会・事例検討会の開催
- □ 情報発信
スタッフ紹介
認知症疾患医療センターでは、医師、臨床心理士/公認心理師、看護師、精神保健福祉士(MHSW/PSW)がそれぞれの役割を基にご本人やその家族のサポートを多職種チームで支援します。
センター長 岡田 俊
担当医 松岡 究 ・ 南 昭宏 ・ 藤本 侑花